働き方改革推進支援助成金とは?各コースの概要や利用時の注意点を解説
働き方改革推進支援助成金とは、働き方改革に取り組む事業主を対象に環境整備に必要な経費を一部助成してくれる制度のことです。助成上限額が定められているものの、指定された成果目標を達成すると金銭的な負担を軽減できます。
本記事では、働き方改革推進支援助成金の概要を紹介します。活用する際の注意点も紹介しているので、併せて参考にしてください。
※2024年3月時点の情報です
働き方改革推進支援助成金とは
働き方改革推進支援助成金とは、働き方改革に取り組む中小企業や小規模事業者を対象に環境整備に必要な費用の一部を助成してくれる制度のことです。労働時間の改善の促進を目的としており、従業員を1人以上雇用していれば利用できます。また傘下の企業を支援する事業主団体も対象となります。
助成対象となる事業主
具体的な助成対象事業主は以下のAまたはBのいずれかに該当する事業主です。さらに労働者災害補償保険の適用事業主であることも対象条件とされています。
業種 | A:資本金または出資額 | B:常時使用する労働者 | |
小売業 | 小売業・飲食店など | 5,000万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 宿泊店・福祉など | 5,000万円以下 | 100人以下 |
卸売業 | 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
その他の業種 | 農業・建設業・製造業など | 3億円以下 | 300人以下 |
助成金の支給対象となる取り組み
助成金の支給対象となる取り組みは以下の9つです。
- 労務管理担当者に対する研修
- 労働者に対する研修・周知・啓発
- 外部専門家によるコンサルティング
- 就業規則・労使協定などの作成・変更
- 人材確保に向けた取り組み
- 労務管理用ソフトウェアの導入・更新
- 労務管理用機器の導入・更新
- デジタル式運行記録計の導入・更新
- 労働能率の増進に資する設備・機器などの導入・更新
働き方改革推進支援助成金を受けるためには、コースごとの成果目標を達成するために助成対象となる取り組みを1つ以上実施します。そして成果目標を達成したら、その状況に応じて費用の一部を助成してくれる仕組みです。それぞれ助成上限額が設定されているため、申請する際はその金額も確認しておきましょう。
なお、団体コース以外の4コースでは各コースの成果目標に加えて、賃金の引上げを成果目標として設定でき、引き上げた額や人数によって助成上限額を以下のように引き上げられます。
◆常時使用する労働者数が30人を超える中小企業事業主の場合
引き上げ人数 | 1~3人 | 4~6人 | 7~10人 | 11~30人 |
3%以上引き上げ | 15万円 | 30万円 | 50万円 | 1人あたり5万円 (上限150万円) |
5%以上引き上げ | 24万円 | 48万円 | 80万円 | 1人あたり8万円 (上限240万円) |
◆常時使用する労働者数が30人以下の中小企業事業主の場合
引き上げ人数 | 1~3人 | 4~6人 | 7~10人 | 11~30人 |
3%以上引き上げ | 30万円 | 60万円 | 100万円 | 1人あたり10万円 (上限300万円) |
5%以上引き上げ | 48万円 | 96万円 | 160万円 | 1人あたり16万円 (上限480万円) |
働き方改革推進支援助成金の助成内容
働き方改革推進支援助成金は以下の5つのコースが用意されています。
- 適用猶予業種等対応コース
- 労働時間短縮・年休促進支援コース
- 勤務間インターバル導入コース
- 労働時間適正管理推進コース
- 団体推進コース
それぞれのコースの概要を紹介します。
適用猶予業種等対応コース
働き方改革推進支援助成金の適用猶予業種等対応コースとは、2024年4月1日から建設業をはじめ適用猶予業種などが時間外労働の上限規制が適用されることを受け、週休2日制の推進や勤務間インターバル制度の導入などの環境整備に取り組む企業を支援する制度のことです。
建設業界における成果目標は、以下の通りです。
成果目標 | 助成上限額 |
36協定の見直し | 最大250万円 |
週休2日制の推進 | 最大100万円 |
36協定の見直しでは、有効な36協定について時間外・休日労働時間数を削減し、月60時間以下、または月60時間を超え月80時間以下に上限を設定して所轄の労働基準監督署長に届け出を行う必要があり、この見直しが成果目標と定められています。
さらに週休2日制の推進では、事業実施前と後の差によって支給される助成金額が変化します。例えば実施前に4週あたり4日の企業が8日以上に休みを増やした場合は100万円支給される仕組みです。
<h3>労働時間短縮・年休促進支援コース</h3>
働き方改革推進支援助成金の労働時間短縮・年休促進支援コースとは、年次有給休暇や特別休暇の促進に向けて環境整備に取り組む企業を支援する制度です。
労働時間短縮・年休促進支援コースの成果目標は以下の通りです。
成果目標 | 助成上限額 |
36協定の見直し | 最大200万円 |
年次有給休暇の計画的付与制度の導入 | 25万円 |
時間単位の年次有給休暇および特別休暇の導入 | 25万円 |
労働時間短縮・年休促進支援コースでは、上記の成果目標のうちいずれか1つを実施することが条件とされています。36協定の見直しでは有効な36協定について時間外・休日労働時間数を削減し、月60時間以下、または月60時間を超え月80時間以下に上限を設定して所轄の労働基準監督署長に届け出を行う必要があります。
勤務間インターバル導入コース
働き方改革推進支援助成金の勤務間インターバル導入コースとは、勤務間インターバル制度の導入に取り組む企業を支援する制度のことです。勤務間インターバルとは勤務終了後、次の勤務までに一定時間の休息時間を設けることを指します。プライベートや睡眠時間を確保することで、従業員の健康保持や過重労働の防止を図っています。
勤務間インターバル導入コースの成果目標は以下の通りです。
成果目標 | 助成上限額 |
9時間以上11時間未満の勤務間インターバル制度の導入 | 80万円 |
11時間以上の勤務間インターバル制度の導入 | 100万円 |
労働時間適正管理推進コース
働き方改革推進支援助成金の労働時間適正管理推進コースとは、労務・労働時間の適正管理の推進に向けた環境整備に取り組む企業を支援する制度のことです。以下の成果目標をすべて実施することを条件としています。
- 新たに労働時間管理と賃金計算などをリンクさせた統合管理ITシステムの導入
- 賃金台帳などの労務管理書類について5年間保存することを就業規則などに規定
- 「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に係る研修を労働者および労務管理担当者に実施
上記3つの成果目標を達成すると、上限額を100万円として助成金を受け取れます。
団体推進コース
働き方改革推進支援助成金の団体推進コースでは、労働者の労働条件改善のために時間外労働の削減や賃金引き上げに向けた取り組みを実施した場合に、その事業主団体などに対して助成する制度のことです。
団体推進コースの成果目標は、支給対象となる取り組みについて事業主団体などが時間外労働の削減または賃金の引き上げに向けた改善事業を行うことです。さらに労働者を雇用する事業主の1/2以上に対してその取り組みや成果を活用することを条件としています。
働き方改革推進支援助成金を活用する際の注意点
働き方改革推進支援助成金を活用する際の注意点は、主に以下の通りです。
- 支給条件を満たしているかチェックする
- 早めに申請の手続きを行う
- すぐに助成金を受け取れるわけではない
それぞれの注意点について解説します。
支給条件を満たしているかチェックする
働き方改革推進支援助成金を活用する際は、支給条件を満たしているかよく確認しましょう。働き方改革推進支援助成金はすべての企業が活用できるわけではなく、対象となる事業主は限られています。また成果目標に向けて取り組みを行い、条件をクリアした場合にのみ助成金を受け取れる仕組みです。そのため実施できる成果目標を選び、支給条件を満たせるかどうかを見極める必要があります。
早めに申請の手続きを行う
働き方改革推進支援助成金を活用したい方は、早めに申請手続きを行いましょう。あらかじめ申請の受付日は決まっているものの、支給対象事業主数は国の予算額によって制限されているため、早めに締め切られる場合があります。実際、2022年度の労働時間短縮・年休促進支援コースは予定よりも早い段階で締め切られています。
そのため働き方改革推進支援助成金を活用したい場合は、余裕を持った行動が大切です。成果目標をどれにするか選んだり、実際に計画を立てたりするのに時間を要するため申請の2~3ヵ月前から検討を開始するといいでしょう。
すぐに助成金を受け取れるわけではない
働き方改革推進支援助成金は、申請してすぐに受け取れるわけではない点に注意しましょう。働き方改革推進支援助成金が受け取れるのは交付が決定した後、取り組みを実施して成果が達成されてからになります。
つまり取り組みにかかった費用は一旦全額を事業主が負担する必要があり、その後に助成金として返ってくる仕組みです。状況によって多くの資金を必要とすることから、計画的に資金調達を行っておくと安心でしょう。
まとめ:働き方改革推進支援助成金を活用して働きやすい職場環境を作ろう
働き方改革推進支援助成金を活用すると、金銭的な負担を軽減しながら環境整備を行えます。特に建設業は2024年4月より働き方改革関連法が適用となるため、今のうちに準備を進めたいところです。
ただし働き方改革推進支援助成金はすぐに受け取れるわけではなく、成果目標を達成したのちに支給される点に注意が必要です。一時的に費用の全額を負担しなければいけないため、計画的に資金調達を行っておきましょう。
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