配管ジャーナルPiping Journal

働き方改革

建設業における採用に影響する課題と採用難を解決するために求められること

建設業において人材不足は深刻な問題です。採用活動を行うものの、募集をかけても集まらなかったり、採用してもすぐ辞めてしまったりするなど、採用がうまくいかず悩んでいる経営者や管理職の方は多いかもしれません。

この記事では、今後の採用活動のために、建設業の現状と建設業における採用に影響する課題、課題を解決するために求められていることについて解説します。

建設業における人手不足の現状

国土交通省の資料「建設産業の現状と課題」によると、技能者などの推移において建設業就業者は685万人(1997年)から494万人(2016年)へと減少しています。また、建設工事で作業を行う技能者や施工管理を行う技術者も同様に減少していることがわかります。

また、建設業就業者の年齢層は、29歳以下が約12%、55歳以上が36%と高齢化も進行しています。

人材不足と次世代への技術継承は建設業界全体の課題であり、若い世代の就業者を増やしていかなければなりません。

引用元:国土交通省 建設産業の現状と課題

建設業の採用に影響する課題

この項目では、建設業の採用に影響する課題を4つ紹介します。

 

  • 長時間労働
  • 賃金の低さ
  • 体系化されていない教育制度
  • 3Kのイメージ

 

それぞれについて以下で解説します。

長時間労働

国土交通省の資料によると、建設業は年間の労働時間が2,056時間と、他の産業と比べて300時間ほど長く、年間の出勤日数は251日と30日ほど多いことがわかります。また、技術者の残業時間は月60時間を上回っています。

建設業界で長時間労働が常態化する理由として考えられるのは、以下の2つです。

 

  • 人手不足な上、納期が短い案件が多い
  • 長時間労働に対する抵抗が少ない業界である

 

天候や資材の納期による遅延、加工や工事方法の見直し、追加で発生する工事など工程表が変更になるケースが多くあります。しかし、工期が延長にならず、スケジュールがタイトになることも少なくありません。また、技能労働者においては6割以上が日給制を取っており、休みが増えると収入が大きく減少してしまうことから週休2日制が定着しづらいです。

 

参考:国土交通省 建設産業の現状と課題

賃金の低さ

国土交通省の資料によると、就労者の賃金ピークは他産業では50歳代ですが、建設業は45〜49歳であり、体力のピークが賃金のピークになることが示唆されています。

建設業は労働者を社員として採用する文化が少なく、先述の通り給与形態は日給制を取ることが多い業界です。日給制は遅刻・早退・欠勤によって給与が変わるため、収入が不安定です。また、天候によって仕事がキャンセルになることもあり、長期的に安定して働くことが難しいイメージがあります。

さらに、建設業には公的な資格がないため、給与額は企業の裁量で決められています。現場作業の評価制度が整っていない組織もあるでしょう。

体系化されていない教育制度

建設業界は肉体労働を主とするため作業は体で覚えることが一般的で、人材育成の制度が整っていない組織が多くあります。現場で見て学ぶものという文化がある他、現場での判断や技術は経験に基づくものが多く、マニュアル化し共有することが難しいのも事実です。

しかし、人的リソースが少なく時間に余裕がない中で、ノウハウや技術を教えながら作業を行う機会は少なくなっています。現場で十分に教育ができない状況になりつつあると言えます。そのため、新しい従業員は余裕がない現場に馴染めず、技術を覚える前に辞めてしまうことも少なくありません。

教育訓練が不充分だと、企業内で最終的な目標を持ちキャリアパスを描くことが難しいと感じる従業員もいるでしょう。将来への不安が募り、早期離職につながっている可能性が考えられます。

3Kのイメージ

建設業には「きつい、危険、汚い」の3Kのイメージがあります。肉体労働な上、高所作業など過酷な現場で作業することがあるため、命に関わる事故や怪我の危険性があります。泥や埃にまみれながら施工作業することもあります。

長時間労働や業務量が多いため、若い労働者の確保は簡単ではありません。体に負担がかかることから長期間働くことが難しくなり、早々に建設業界を離れる人もいるでしょう。

しかし、国土交通省はこれまでの3Kのイメージを払拭すべく「給与、休日、希望」の新3Kを掲げ、建設業の魅力向上を図っています。適切な給料と休日を設定し希望が持てる業界にするため、国土交通省からの発注工事において以下のような取り組みが進められています。

 

  • 下請企業からの給与引き上げに必要な労務費見積もりを尊重する企業を優位に評価する
  • 原則週休2日を実現できる工期で設定する

 

建設業では新3Kに向けた働き方改革が急務です。

 

参考:国土交通省 新3Kを実現するための直轄工事における取組

建設業の採用難を解決するために求められること

建設業の人材不足を解消するために、国は取り組みを進めています。企業としても以下のような積極的な対応が求められます。

労働環境の改善

下記のような労働環境の問題を解決することにより人材の定着が期待できます。

 

  • 給与が低い
  • 収入が不安定
  • 長時間労働
  • 休みが少ない

 

給与改定は経営状況に影響するため、取り組むには時間がかかると考えられます。一方で労働時間や休みについては、適切な工期を設定することによって調整できる可能性があるでしょう。

時間外労働は、労働基準法により月45時間・年間360時間、労使が合意する場合は年間720時間以内、時間外労働+休日労働は月100時間未満、2〜6ヶ月平均80時間以内という上限があります。

上限規制は2019年より適用されていますが、人手不足が深刻な建設業は5年間の猶予が設けられています。しかし、2024年4月からは時間外労働の上限が適用となるため、法に則って働くために労働環境の改善は必須です。

上限規制により週休2日制が導入されることになります。就労時間が減ってもスケジュール通り施工を進めるために、外国人労働者の受け入れなどの検討が必要になるでしょう。

また、安定的な仕事量や女性の活躍の場の準備、教育の体系化などの取り組みも人材確保につながることが期待できます。

生産性の向上

少子化が問題になっている日本において、生産性の向上を目指すことは喫緊の課題といえます。限られたリソースを最大限に活かし、大きな成果を生み出さなければなりません。建設業における具体的な取り組みとしては、以下が考えられます。

 

  • システムの導入
  • 作業ロボットの導入
  • 社外サービスの利用

 

施工の進捗管理、工程の管理・共有など施工の一連の流れにおけるプロセスやデータを一元管理できるシステムの導入により、コミュニケーションや業務の効率化を目指せます。施工管理や図面管理をスマートフォンやタブレットで行えるようにすれば、現場にいながら最新情報を確認できます。多くの紙資料を現場に持ち込んだり、最新版のデータを事務所に取りに戻ったりする負担がなくなります。

高所作業や夜間の現場監視を行う作業ロボットを導入することにより、作業負担が軽減し女性でも働きやすい環境作りを進めることができるでしょう。

また、配管加工や図面作成など社外サービスを利用することにより、人員削減や省力化が期待できます。専門サービスに依頼することにより精度を上げられ、品質の安定化と向上が見込めます。

まとめ:システムや社外サービスをうまく利用して採用難を乗り越えよう

団塊の世代が75歳以上となる「2025年問題」が目前となっています。建設業においても影響は避けられず、高齢化が進む現場で人材不足の加速が懸念事項です。2024年4月の時間外労働の上限規制への対応に加え、長時間労働の是正や給与体系の見直しなどへの取り組みが求められます。

そのためには、業務効率化のためにシステムの導入や社外サービスの利用の検討をおすすめします。

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