定水位弁の構造を理解して安全な工事を推進
受水槽や貯水槽、給水槽などの給水設備で一番重要なのは、水位を一定に保つことです。水位バランスを調整するものはボールタップなどもありますが、実際の給水では定水位弁も大きな役割を果たします。 ここでは、定水位弁の役割や構造などを紹介します。定水位弁の修理や交換時に役立ちます。
定水位弁の概要
資料提供:株式会社ベン
集合住宅や大規模建造物での給水は、主に高置水槽方式や加圧給水方式が採用されます。これらの給水方法は、大量の水をいったん受水槽に貯め、高置水槽やポンプで各給水管へと配水する仕組みです。 受水槽や貯水槽への給水を一定に保つのは定水位弁の役割です。
定水位弁とは
定水位弁は受水槽や貯水槽の水位を一定に保つバルブのことです。ストレート形、アングル形、各種機能付きなど様々な種類があります。主弁(本体)と副弁(子弁)、パイロット弁(ボールタップや電極棒)により構成されます。一般用、流量・弁閉時間調整機構付、寒冷地用などがあります。
主弁は水槽の外部に、副弁は水槽の内部に設置されます。基本的に主弁は受水槽の外部の配管上に取り付けますが、定水位弁の形状によって設置場所が異なります。定水位弁は主弁が水槽の外部にあることから、メンテナンスを行いやすく、広く利用されています。
水槽への給水管の管径がおよそ25mm以上の水槽には、ボールタップまたは電極を副弁とした定水位弁が多く使用されています。 なお、水道企業体によっては、定水位弁に水撃(ウォーターハンマー)防止器の設置を義務付けている所もあるので、事前に定水位弁の設置条件の有無について確認が必要です。
定水位弁と給水のしくみ
給水および給水停止時の定水位弁の作動について説明します。
給水時の定水位弁の働き
水槽の水位が下がると副弁(ボールタップや電磁弁)が感知し、副弁が開きます。すると圧力の変化で主弁も連動し、貯水槽へ給水が開始されます。 主弁を押し上げた水は、弁が全開した状態を保持しながら、安定した給水を続けます。
給水停止時の定水位弁の働き
水槽内の水位が上がるにつれてパイロット弁も上がります。パイロット弁が上がり副弁が閉まると配管から流入した水が充満します。その水圧で主弁が閉まり始めます。
給水は徐々に流入していくため、主弁の閉止速度もウォーターハンマーを起こさないようにゆっくりと閉止します。完全に主弁が閉まると給水は終了です。
定水位弁はこの作動を繰り返すことで、水槽へのスムーズな給水、確実な水位制御を行います。
定水位弁の取り付け順序
定水位弁(主弁)の取り付け方について説明します。
定水位弁(主弁)の取り付け方
資料提供:株式会社ベン
定水位弁は給水管途中の位置に取り付けます。受水槽の外の、保守・点検のしやすい位置に設置します。
- 管内を充分に洗浄します。配管内の洗浄が不十分だと、ゴミ噛みによる作動不良の原因になります
- 主弁の前には必ず制水弁(止水栓)を取り付けます。保守点検、凍結防止の水抜きに必要です
- 制水弁(止水栓)と主弁の間にストレーナを取り付けます。国土交通省仕様では、40メッシュ以上、電磁弁を使用する場合は80メッシュ以上となります
- 配管に取り付けの際は、配管に水平に、正立に設置します
- 定水位弁に荷重や振動がかからないよう、配管は十分に固定します
- 保守点検のため、配管中心から上下に呼び径20~50は300㎜以上、呼び径65~100は500㎜以上のスペースを確保します
主弁の前か後にはユニオンまたはフランジを取り付けておきます。故障の早期発見のために、満・減水警報装置を設置し、マンション・ビルの管理室などに表示(ランプ・ベルなど)するよう考慮します。凍結の恐れがある場合は、あらかじめ水抜きや保温処理をしておきます。
設置後の処理
設置後は、通水を行います。通水前には以下の点検を行います。
- 定水位弁の作動圧力が0.03~0.75MPaの範囲内であること
- 本管、パイロット配管が確実に固定されていること
- ボールタップの取り付け、作動に異常がないこと
- 寒冷地の場合は水抜レバーが下がっているか、水抜栓が閉じていること
通水時は配管内の空気を抜き、定水位弁の開閉テストを行います。定水位弁の異常の有無やボールタップとの連動を確認します。水圧が高い場合や吐水側落差が大きい時は流量の調節を行います。
定水位弁のトラブル
受水槽や貯水槽のトラブルで多いのは、貯水槽への給水が止まらなくなってオーバーフローしたり、逆に給水量が少なくなって断水したりというケースです。貯水槽への給水に大きな問題が出ます。
こうしたトラブルの原因はいくつか考えられますが、定水位弁の弁開不良などである場合もあります。水が止まらない、あるいは出ない場合の原因として、パイロット弁の故障や配管にゴミが詰まっている場合もあります。
ゴミなどを除去すれば正常に作動する場合は問題ありませんが、常に水にさらされる設備であるため、故障の原因が比較的少ない環境を整備するのも重要です。
定水位弁を選ぶ際は、水のパイロット配管への通路をバイパス流路とするなど、波浪によるボールタップへの断水給水の影響がない、静かで安定した給水ができる製品が望まれます。
まとめ:定水位弁のしくみを理解して安全な工事を
定水位弁は、受水槽・給水槽の給水量を調節する重要な設備です。定水位弁の取り付けは、配管の状態を確認し、設置手順を踏みながら確実に行います。安定的な給水を行うためには、定水位弁の作動状況に不備がないよう、定期点検などで故障を回避することが大切です。
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