建設業の安全対策|想定されるリスクを未然に防ぐための対策とは
建設現場では、高所作業や重機の使用が頻繁に行われるため、安全管理を徹底して作業を実施しています。しかし、それでも事故を完全に防ぐことはまだできていないのが現状です。
この記事では、建設現場で起こりうる事故のリスクについて解説し、事故の発生要因を踏まえた上で、効果的な事故防止のための安全対策についてご紹介します。
建設業での労働災害発生状況
上の表は、厚生労働省による建設現場での死傷事故・死亡事故の発生状況について、2018(平成30)年〜2023(令和5)年をまとめたものです。
死傷災害の総数は増減を繰り返しつつも、全体としてはほぼ横ばいの状態が続いており、建設現場での事故がなかなか減少しない状況が続いていることがわかります。
特に転倒による事故は、軽微な事故のように見えがちですが、実際は毎年1,500人以上の作業者が負傷しており、転ぶ程度と侮らず、事故の減少に向けた取り組みが求められています。
また、死亡災害の件数は2022年から減少傾向にあるものの、事故の種類によっては増減を繰り返しているケースも見られます。
建設業で想定される事故・リスク
建設現場で発生し得る事故には、多くの要因が関与しています。以下では、建設現場で想定される主な事故について説明します。これらの事故は、厚生労働省の労働災害発生状況の分析にも挙げられており、発生状況は少なくないことがわかります。
- 墜落・転落
- 交通事故(道路)
- 飛来・落下
- 崩壊・倒壊
- 挟まれ・巻き込まれ
- おぼれ
- 高温・低温物との接触
- 激突
墜落・転落
建設現場では高所作業が多いため、転落や墜落といった落下事故のリスクが特に高くなります。実際、建設業における死傷事故の主な原因は高所からの落下です。
例えば、トラックの荷台で積み込み作業をしている最中に荷崩れが発生し、作業員が落下して負傷するケースがあります。また、足場で荷物の受け渡しをしている最中にバランスを崩して落下し、怪我をするケースもあります。
交通事故(道路)
建設機器や建材の輸送中に発生する道路交通事故も建設現場で想定される事故の一つです。例えば、道路で作業をしていた作業員が交通事故に巻き込まれる場合や、橋梁改良工事の現場で自動車に轢かれるケースがあります。また、作業員の送迎中に車両が事故を起こす事例も存在します。
飛来・落下
建材や機器、工具の飛来や落下による事故も多く見られます。建設機械で吊り上げて移動させている建材が落下し、作業員がそれに当たって負傷した事例や、足場での作業中に上の階層から誤って建材を落下させ、下層で作業していた作業員が怪我をするケースもあります。
崩壊・倒壊
掘削作業中における溝や斜面の崩壊、または工事中の建物の倒壊などにより、作業員が巻き込まれる事故も起こる場合があります。例えば、民家の解体作業中に壁面が突然崩壊して負傷者が出た事例や、狭い場所でブロックを積む作業中に作業員がブロックの倒壊に巻き込まれた事故などが挙げられます。
挟まれ・巻き込まれ
建設現場では、機械や車両の操作中に挟まれたり、巻き込まれたりする事故も頻発しています。例えば、ドリル作業中に指が巻き込まれて怪我をするケースや、現場での車両のバック時に後方確認を怠り、壁と車両の間に別の作業員が挟まれ負傷する事故が報告されています。
激突
建設現場では、大型の機械や建材を吊り上げたり移動させたりすることが多いため、これらが作業員に激突する事故も発生します。
例えば、木の伐採中に伐採方向を誤り、木が作業員に激突する事例や、稼働中の大型建設機械の近くで作業をしていた作業員に機械の稼働部分が激突する事故などが挙げられます。
これらの事故を防ぐためには、常にリスクを意識し、適切な安全対策を講じることが不可欠です。
事故の発生要因
建設現場でのこうした事故の発生には、いくつかの要因が関与しています。以下では、主な要因について説明します。
作業員の意識的要因
作業員の注意力や集中力が低下したり、事前の点検を怠ったりするなど、作業員自身の意識が事故を引き起こす原因となるケースです。これには、安全意識の欠如や油断、疲労による判断力の低下なども含まれます。
作業現場の環境要因
作業環境自体が安全を損なう要因となる場合があります。例えば、高所作業が必要な場所に手すりが設置されていなかったり、足場が不十分に組まれていたりするなどのケースです。こうした不備は、作業員の転落事故などを引き起こすリスクを高めます。
管理的要因
作業員の体調管理が不十分だったり、人手不足の状況で無理な作業を強いられる場合も、事故の原因となります。例えば、激務による疲労が蓄積し、高所作業中に注意力が散漫となり、転落事故が発生することもあります。人手不足が続く現代において、このような管理の不備は重大な問題となります。
機器・道具的要因
機械や道具の欠陥、不備、劣化などが原因で事故が起こる場合もあります。機械や道具の標準化の未実施、あるいは適切な点検や整備がされていないことが、事故を引き起こす要因になります。これには、機械の動作不良や工具の故障なども含まれます。
事故発生率の高い時期
建設現場での事故は、時期によって発生率が高くなることがあります。例えば、夏の暑さがピークに達する8月は、熱中症のリスクが高まり、事故の発生率も上昇します。また、寒暖差が大きい冬季には、作業員が体調を崩しやすく、これも事故の増加につながる要因となります。
これらの要因を理解し、適切な安全対策を講じることで、事故の発生を未然に防ぐことが重要です。
事故を未然に防ぐためのリスク対策3つ
事故を未然に防ぐためには、以下のリスク対策を講じることが重要です。建設現場では人命を最優先し、質の高い作業をスケジュール通りに進めるためにも、事故を回避することが求められます。
作業員の安全意識の向上
作業員の安全意識が低いと、事故のリスクが高まります。社内研修や外部研修を活用し、作業員に対して安全に対する意識を向上させる取り組みが不可欠です。全ての作業員が、常に事故のリスクを認識し、安全第一で作業を行う環境を整えることが重要です。これにより、作業員はリスクを意識した行動を取るようになります。
人員の配置・管理に余裕を持つ
人員不足が原因で発生する事故も少なくありません。特に、建設機器や車両を使用する作業では、誘導員の不足が事故を招く要因となります。そのため、作業員の適切な管理体制を整えるとともに、人員の確保と配置に余裕を持つことを徹底することが重要です。これにより、現場での安全性を向上させることができます。
これらのリスク対策を講じることで、建設現場での事故を防ぎ、作業を安全に進めることが可能になります。
リスクアセスメントの導入
リスクアセスメントは、職場に存在するリスク要因を特定し、それらを排除または低減するためのプロセスです。まず、潜在的なリスクを洗い出し、そのリスクの程度を評価して、適切な対策を検討します。対策が決定したら、それを現場で実行に移します。このプロセスを通じて、事故の発生リスクを体系的に管理することができます。
3D空間スキャンを活用し現場と安全対策の省力化を図ろう
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まとめ:現場の安全管理を徹底して事故防止に努めよう
建設業は重大な事故につながるリスクのある作業をおこなう必要があります。建設現場では、安全管理の取り組みが進む一方で、依然として多くの労災事故が発生しているという報告があります。
企業は安全管理の徹底に加え、労働安全衛生法に基づいた作業環境の整備を行い、安全意識を高めるための作業員向け研修を欠かさず実施することが求められます。また、作業員の注意力や判断力の低下を防ぐため、過重労働を避け、適切な人員配置と管理を行うことも重要です。
こうした取り組みを通じて、事故防止に努めるとともに、さまざまなリスクに備えることで、すべての作業員が安全に働ける現場を実現しましょう。