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建設業の安全管理|建設現場における安全管理体制について解説

建設業は、墜落や転落などの労働災害(労災)が特に起こりやすい業種です。他業界と比較して労働災害のリスクが非常に高いため、安全管理の徹底が求められます。

本記事では、建設業における安全管理について、発注者・事業者・特定元方事業者の違いにフォーカスしながら、解説していきます。

建設業で安全管理が重要な理由

建設工事で最も重要なのは、無事故で工期内に工事を完了させることです。人命が何よりも優先されるのは当然で、「安全」は施主や工事業者をはじめ、工事に関わる全ての企業にとって経済的なメリットにもつながります。

事故が発生すると工事が中断し、不稼働による損失や納期遅延が発生する可能性があります。安全に工事が進行すれば、早期完工も可能になります。これにより、請負会社はコストや人的資源を次のプロジェクトに投入でき、施主は早期の操業開始で投資回収を早めることができます。

このような理由からも、工事現場における安全意識は年々高まっており、施工管理における安全管理の重要性も増しています。

安全管理では、どの場所でどのような状況で事故が発生しやすいかを予測し、作業員が安全に働けるように対策を講じます。

建設現場における安全管理体制

出典:建設業労働災害防止協会|第2章安全衛生管理体制等

「建設業労働災害防止規程」第5条では、労働安全衛生法(安衛法)に基づいて、複数の事業者が混在する作業現場での適切な安全衛生管理体制を整備することが求められています。

混在作業現場においては、安衛法の規定に従い、元方事業者が統括安全衛生責任者、元方安全衛生管理者、店社安全衛生管理者を選任し、現場での労働災害を防ぐための業務を遂行する必要があります。また、トンネル工事や圧気工事現場では、規模に応じて「ずい道等救護技術管理者」を選任し、その職務を遂行することが必要です。

さらに、元方事業者が統括安全衛生責任者を選任する場合、関係する請負人も安全衛生責任者を選任し、安全衛生責任者は統括安全衛生責任者との連絡業務を遂行し、必要事項を関係者に伝えることが求められます。

また、元請業者と関係請負人が混在する作業現場では、労働災害防止協議会を設置し、月に1回以上の頻度で協議会を開催する必要があります。この協議会では、責任者や管理者が集まり、工事における労働災害防止について協議することが重要です。

建設現場に必要な安全衛生管理者

複数の事業者が関わる建設現場では、以下の安全衛生管理者が必要です。

  • 統括安全衛生責任者
  • 元方安全衛生管理者
  • 安全管理者
  • 衛生管理者
  • 安全衛生推進者(または衛生推進者)
  • 店社安全衛生管理者
  • 産業医
  • 作業主任者

これらの安全衛生管理者は、建設現場での事故防止や労働者の健康を守るために、それぞれの役割に応じた管理を行い、総合的な安全衛生体制を確立します。この項目では、それぞれの役割について解説します。

統括安全衛生責任者

統括安全衛生責任者は、現場全体の安全衛生管理を統括する最高責任者です。建設現場における全体的な安全衛生対策の推進、監督、指導を行います。

建設現場で働く複数の協力会社(関係請負人)の労働者が混在している場合に、現場で働くすべての労働者の安全を確保するために、協力会社との連携を図り、危険を未然に防ぐための指示や監督を行います。統括安全衛生責任者の選任は、建設現場の安全と労働者の健康を守るために重要です。

元方安全衛生管理者

元方安全衛生管理者とは、統括安全衛生責任者が担当する事項のうち、技術的かつ具体的な部分を管理する役割を持つ資格です。建設業やその他政令で定められた業種に属する事業者は、統括安全衛生責任者を選任する際に、元方安全衛生管理者も選任する必要があります。

一方で、統括安全衛生責任者は、特定の業種において一つの現場ごとに選任され、複数の請負業者の労働者が混在する現場で、労働災害の防止に関して指揮・統括管理を行う責任者を指します。

元方安全衛生管理者の主な役割は、統括安全衛生責任者が適切にその業務を遂行できるように補佐することです。これにより、現場全体の安全衛生管理体制が効果的に維持され、労働災害のリスクを最小限に抑えることが求められます。

安全管理者

安全管理者は、現場の安全に関する実務的な責任者です。主に、現場の危険予測や対策の計画、安全教育の実施、安全点検などを担当します。

衛生管理者

衛生管理者は、現場の衛生管理に関する責任者で、労働者の健康管理や災害予防、清掃、環境衛生の維持などを行います。

安全衛生推進者(または衛生推進者)

安全衛生推進者は、安全衛生に関する啓発活動を担当する役割を担い、中規模な現場での安全衛生教育や危険予測・対策の計画、安全衛生に関する情報の提供などを行います。

店社安全衛生管理者

店社安全衛生管理者は、現場に出入りする事業者の安全衛生管理を担当します。主に、安全衛生教育の実施、安全情報の提供、現場の安全衛生問題の解決などを行います。

産業医

産業医は、作業員の健康管理に関する専門的な責任を負います。健康診断の実施、作業による健康リスクの予防、労働災害発生時の治療の支援などを担当します。

作業主任者

作業主任者は、特定の作業における安全衛生管理を行う責任者です。作業中の危険予測や対策の計画、安全衛生教育の実施、作業進捗の管理などを担当します。

建設現場での労災事故は、作業員の命を危険にさらすだけでなく、プロジェクトの進行に遅れを生じさせたり、法的責任を問われる事態を招く可能性があります。そのため、現場管理者や安全担当者は、事故防止を最優先課題として取り組む必要があります。

具体的には、以下の12の対策を講じるとよいでしょう。

 

1.安全衛生管理計画を作成する

2.定期的に機器の点検をする

3.上下・高所作業時の安全対策をする

4.工法を確認する

5.危険予知訓練を実施する

6.天候に応じた対策をする

7.5Sを徹底する

8.ヒヤリ・ハットを全員と共有する

9.作業員の体調管理を徹底する

10.作業員に対し安全教育をする

11.コミュニケーションを強化する

12.労災発生時に備えた対をする

 

それぞれの具体的な取り組み内容は以下の記事で紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
建設現場における安全管理の重要性と基本要素・最新技術を紹介

このように、建設現場では安全管理のために多岐に渡る取り組みが求められます。これらの対策を徹底することで、作業員の安全を確保し、事故の発生を未然に防ぐことができます。

建設業界の安全対策を効率化するには

近年では、建設業における安全管理にまつわる業務の効率化に、DXが進んでいます。

建設業の安全管理計画の作成を効率化するシステムや、監視カメラとAIを活用した車両や作業員の管理などが代表的です。こうしたツールの導入により、現場の安全性の向上と安全管理の効率化が図れます。安全管理の効率化に課題を感じているなら、DX化に踏み切るのも一つの手です。

3D空間スキャンを活用し安全管理業務の省力化を図ろう

三興バルブ継手では、複雑な配管施設の現場調査を3D空間スキャンで実施するサービスをご用意しております。

3D空間スキャンの活用により、これまで手計測手法で必要だった安全管理や段取りの負担を軽減できます。高所作業に伴う重機搬入や足場設置、作業の安全管理業務の手間を省くことができるためです。加えて、現場調査業務の大幅短縮と図面技術者不足の解消につながります。

3D空間スキャンとは、最新の空間スキャン技術を活用し、「現況の図面がない」を解決するサービスです。弊社のスタッフが現場にて現地調査と現況のデータを取得後、現場の仕様打合せを経て、図面CADを製作する一連のプロセスのことです。

現場の省人・省力・省施工化を目指したいなら、ぜひ一度、お問い合わせください。

まとめ:建設業において安全は最優先事項

建設業で最優先すべきは、安全です。工事が完了するまで安全を守るため、万が一の事故に備え、安全への基本的な対応を徹底し、リスクを最小限に抑えるよう心がけましょう。

配管資材専門店VALVIA(バルビア)