スチームトラップの役割や構造を紹介!故障時の選定方法も
スチームトラップは、蒸気を使用したり生産したりする設備には欠かせない自動弁です。しかし、構造や役割などについて細部まで理解している方は少なくないのではないでしょうか。スチームトラップが故障した場合、後継機種の選定に苦労する場合もあるでしょう。
そこでこの記事では、スチームトラップの役割や構造、原理、故障時の製品選定に役立つ情報を紹介します。
スチームトラップの役割とは
スチームトラップとは、機器に溜まったドレン(凝縮水)やエアーを排出する自動弁です。蒸気の生産性向上を目的として蒸気を使用・生産する設備には欠かせない省エネルギー機器です。蒸気を漏洩させずにドレンや水だけを排出し、機器の不具合を防げます。
ウォーターハンマー(スチームハンマー)現象の防止
スチームトラップは、ドレンによる不具合の1つであるウォーターハンマー(スチームハンマー)現象を防止するのに役立ちます。
加熱した蒸気が冷えてできたドレンに蒸気が触れた時の比体積差によって、蒸気が一気に凝縮して蒸気体積がほぼゼロになります。蒸気で充満していた空間は、この凝縮過程で一時的に真空状態になり、ここに向かってきたドレンがぶつかり合うことによってウォーターハンマー(スチームハンマー)が発生します。
配管内にドレンが溜まり、蒸気の急速な流れに引っ張られた水の塊が、高速で配管や機器にぶつかることによって振動や衝撃音が起こると、最悪の場合、損傷してトラブルにつながります。
加えて、ドレンが熱交換器内部などに溜まることにより、熱交換率の低下や機器が腐食を招く原因にもなります。スチームトラップを設置することで、これらの不具合を防げます。
スチームトラップの作動・原理
スチームトラップにはバケット式やフリーフロート式、フリーボールバケット式、ポンプ機能内蔵式などいくつかの種類があり、構造はそれぞれ異なります。中でも使用されることの多いフリーフロート式トラップの場合、次のように作動します。
1.蒸気の通気は初めからエアベントが開けられている状態で、そこから空気が急速に排出される。同時に、低温復水が本体内部を満たし、フロートが大きく浮上する。
2.浮力が弁部に伝わり、弁自体が全開して水を排出する。復水温度が上昇し続ける中で、初期の空気が抜け切ってエアベントが閉じる。高温復水を下部の弁のみから排出し続け、ほとんどドレンを抜き終わると蒸気の流入が伴う。
3.復水の発生量に合わせてフロートは浮き沈みするため、弁開度を調整しながら復水を排出する。
スチームトラップの用途
スチームトラップは、使用する機器・装置に適したタイプを選ぶ必要があります。間違った形式を選定すると、正常に作動できずドレンが排出されないことや蒸気の漏洩などの症状を引き起こす可能性があります。
スチームトラップはそれぞれ次のような用途で使用されます。
蒸気輸送管(主管・枝管・ヘッダなど) | バケット式、フロート式、サーモエレメント式、ディスク式 |
空調・生産設備(熱交換器など) | バケット式、フロート式 |
空調・生産設備(エアハンドリングユニット) | バケット式、フロート式 |
食品製造・厨房設備(煮釜・加熱釜など) | バケット式、フロート式 |
クリーニング機器(プレス機・乾燥機など) | バケット式、フロート式、ディスク式 |
医療・薬品・食品機器 | (オートクレーブ・滅菌器など)バケット式、サーモエレメント式、ディスク式 |
スチームトラップの選定方法
スチームトラップは、使用機器のドレン発生量に合わせ呼径選定を行います。呼径選定の計算式は次のように表されます。
スチームトラップの排出量>ドレン発生量×3(安全係数)
ドレン発生量=スチームトラップの排出量とする場合、ドレンを排出しているとしても配管や機器・装置内にはドレンが充満していることになります。このため、安全係数を取る必要があります。安全係数は経験的に通常3と設定します。
スチームトラップの呼び径は配管や使用する機器のドレンの発生量に、安全係数3を掛けた量を排出する能力を持った呼び径並びに型式を選定します。
トラップ以降も同径で長い距離を引き伸ばす場合、別途圧力損失等を考慮し配管サイズを決めます。
故障時は呼径選定をして適切なスチームトラップを設置しよう
この記事では、スチームトラップについて紹介しました。スチームトラップは、機器内に溜まったドレンを排出し省エネルギーにつながるだけでなく、損傷や漏洩などを防げる重要な設備である。故障時は、用途や呼径選定により適切な製品を選びましょう。
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