大規模修繕工事の進め方!「修繕」と「改修」の違いとは?
大規模修繕工事の時期に法的な定めはありませんが、概ね12年周期で行われます。これは建築基準法で築後10年を経過した物件に、外壁の全面打診調査を行うことを求めていることと関係があると言われています。
大規模修繕工事は大がかりなプロジェクトですが、大規模修繕工事と改修工事の内容の違いについて、よく知られていない場合があります。修繕と改修の違いや大規模修繕工事のスムーズな進め方について説明します。
「修繕」と「改修」の違い
同じ意味で使用されがちな「修繕」と「改修」ですが、には明確な違いがあります。
「修繕」とは、経年や外的要因によって劣化、不具合が発生した建物、建物の一部、設備、部材などに対して修理や取り替えなどの処置を行い、支障なく利用できる状態まで回復させる処置を指します。一方「改修」は、時代や社会情勢の中で変化していく環境に即して、居住性の向上や、性能や機能を高めるための工事を言います。
大規模修繕工事と一般的な改修工事は別に行われることが多いですが、大規模修繕工事と同時に改修工事を行う場合もあります。 大規模修繕工事と改修工事を行う場合は、大規模修繕工事で建物の性能を維持・資産価値を守りつつ、改修工事で現在の建築水準にグレードアップするという両極性を実現します。
大規模修繕工事の進め方
工場や倉庫などを長く使用するための、修繕の進め方について説明します。
大規模修繕工事のタイミング
建築基準法で定められた外壁全面打診調査の経過基準年である10年を過ぎたタイミングで、大規模修繕工事を実施することが多いです。建物の老朽化が顕著な場合、生産設備の入れ替えや導入など工場の刷新、法律や条例の改正に伴い、大規模修繕工事を行います。
大規模修繕工事の範囲を明確に
大規模修繕工事では修繕する範囲を明確にすることが重要です。工場の外部や内部だけ修繕するのか、改修やリニューアルも含めるのか、計画時に明確にします。
工事期間中の生産活動の有無
工場の大規模修繕では、工事中の生産活動の有無が重要です。大規模修繕で行う工場内部の修繕では、生産活動を停止せずに実施することが多いです。ただし、通常通りの生産性を維持できない可能性があるため、生産スケジュールの調整が必要です。
改修コストを確保
工場の大規模修繕は、その範囲や改修内容にもよりますが、大きなコストがかかることが多いです。現地調査をはじめあらゆる工程で、費用を極力抑える工夫が必要です。
大規模修繕工事の実施
工場の大規模修繕の流れと、それぞれの工事内容について説明します。
現地調査
大規模修繕を行う前には、現地調査(現調)を行い、既存建物の不具合や劣化の有無を確認し、修繕内容に活かします。
現地調査では、目視、打診、実測を基本に状況確認をします。修繕工事費用の見積にも使うため、正確に調査します。
現地調査は、打診棒を使って音を見極め、塗膜やタイルの浮き、爆裂などを確認します。塗装や防水、シーリング工事が必要な場合は計測します。調査では、建物全体や工事個所の写真も撮ります。工事の際に注意する箇所の写真も撮っておくと安心です。
大規模修繕の場合、多くのケースで足場が必要になることが多いです。足場設置の難しい場所の有無や公道を確認します。足場を公道に建てなければならない場合は、役所に許可を取ります。
仮設工事
次に仮設工事を行います。足場や現場事務所、仮設の設備などのほか、塗料の飛散防止や落下物防止のためのメッシュシートなどを設置します。
下地補修工事
下地補修工事では、壁や天井など、コンクリート躯体部分に生じたひび割れなどを補修します。どんなに美しく仕上げても、下地の状態が良くないと劣化症状の再発につながり、その後の工程にも大きく影響します。建物の耐久性や寿命にもかかわることもあるため、ていねいに進めます。
タイル補修工事
経年変化によりタイルが下地から浮いたり、ひび割れるケースも多いです。放置しておくと、タイルの浮きやひび割れた部分から入った雨水がコンクリートを傷めたり、タイルやコンクリートの落下事故にもつながります。
大規模修繕工事では、タイルの施工部分を全て、作業員が打診や目視で確認し、補修します。この作業により、耐久性や防水性が回復するうえ、安全も確保できます。さらに美観も保てます。
シーリング工事
主に外壁のつなぎ目やサッシ廻りに使用されるシーリング材は、経年により硬化し、ひび割れやすくなります。わずかなひび割れや隙間から雨水やほこりなどの汚れが侵入し、雨漏りの原因になることもあります。
大規模修繕工事の際、シーリング材を打ち替えるのが一般的です。シーリング材を新しくすると躯体や室内への雨水等の侵入を防ぎ、建物の気密性が高まるため断熱性の向上も期待できます。
鉄部の塗装工事
扉や外部階段、手すりなどに使用されることの多い鉄部は、経年によって錆びが発生し、見た目や耐久性で問題となります。サンドペーパーやワイヤーブラシなどを使って丁寧に錆びを落とし、塗装を重ね、しっかり保護します。見た目と耐久性の両方で改善が可能です。
防水工事
経年によってコンクリートに生じたひびなどから内部に水が浸入すると、構造部にダメージを与える原因になります。大規模修繕工事では、屋上やバルコニー、廊下といった箇所に防水工事を行い、雨水や汚れなどからコンクリートを守ります。
特に、ふくれ、破れ、しわなどの症状が見られる場合は、早めの補修が不可欠です。防水工事には「シート防水」や「塗膜防水」など様々な工法があります。
その他の修繕工事
建物の築年数や交換工事の回数、依頼主の要望などを元に、エントランスの改修、玄関扉やサッシの交換、給排水管の更新・更生なども、必要に応じて大規模修繕工事に組み込みます。バリアフリーのようなユニバーサルな改修を加える場合も、このタイミングで行うといいでしょう。
大規模修繕工事には正確な図面が不可欠
大規模修繕工事を行うには、工場の内部や現況などを詳細に記した正確な施工図が必要です。現地調査で得た多くの情報を、施工図に効果的に反映することが重要です。
大規模修繕工事に必要な図面を起こす際、現地調査で得た測定結果を反映しますが、多くの場合、目視や実測に頼るため、現地調査時の状況や測定時の環境によって誤差が生じる可能性があります。
誤差が生じると、資材の調達や工程に影響を及ぼし、工期の遅れなどの問題の原因になることもあります。防止策として、3Dレーザースキャナーを用いるのが効果的です。
測定には3Dレーザースキャナーが有効
3Dレーザースキャナーで得た点群データを基に3Dモデルを作成し、平面図や断面図として活用が可能です。現況調査で工場内部を詳細に把握するには多くの時間が必要ですが、3Dレーザースキャナーであれば時間の短縮や、人員の削減も可能になり効率的です。
取得した点群データを基に、素早く簡単に現況モデリングが可能です。 3Dレーザースキャナーの主なメリットには次のものがあります。
- 点群データを基に構造物の測距が可能
- 追加で距離情報が必要になった際、再度現場へ行かずともPC上で測距できる
- 天井内など測距作業を行いにくい場所でも点群データから簡単に測距できる
そのほか、次のようなメリットもあります。
- 現地調査の効率化
- 現地調査にかかる時間の短縮(現調から図面完成まで最短1〜2日で完成)
- 図面の制作日程が明確になりやすい
工場においては、竣工図や施工図はあっても、途中で改修工事が入っていると元の図面と現況が異なることがあります。追加あるいは撤去した設備がある場合は、図面との整合性をとるのに、3Dスキャナーが役立ちます。
3dレーザースキャナーの事例については次の記事で詳しく解説しておりますので、ぜひ参考にしてみてください。
3Dレーザースキャナー活用事例①工場の改修工事に現況の図面が必要な場合
3Dレーザースキャナー活用事例②新設する配管ルートを現況の図面に併記したい
3Dレーザースキャナー活用事例③現況を図面化して今後の改修工事に役立てたい
まとめ:大規模修繕工事は正確な図面作成から始めよう
大規模修繕工事の前には、現地調査(現調)を行い、どういった修繕が必要か調査します。プラント工場など、複雑な構造の工場の修繕工事には、正確な計測結果を落とし込んだ施工図が欠かせません。
大規模修繕工事には、正確な情報が反映された図面が求められます。3Dレーザースキャナーは、点群データから平面図を描き起こし、モデリングでは詳細な構造を視覚化できます。現地調査の時間短縮・人員削減にも効果的です。大規模修繕工事は、3Dレーザースキャナーの正確な図面でスムーズな工事を目指しましょう。
業界ひとすじのプロ集団である三興バルブ継手株式会社では、「配管設備資材の販売・納品」だけでなく、改修工事現場を中心とした「3Dスキャナによる図面作成」や、「配管加工・ハウジングプレファブ加工」までワンストップでお届けできるサービスを展開しております。幅広い知識を持つ専任の担当者が対応いたしますので、お気軽にお問い合せください。