知っておきたい「グリーンファイル(安全書類)」の概要と種類について解説
グリーンファイル(安全書類)は、建設現場の安全を守る目的で着工前に作成される書類です。工事の体制や作業員名簿、安全面への配慮などを記します。安全というイメージが強い緑(グリーン)のファイルで綴じられることが多いため、この名で呼ばれています。
建設現場の安全を管理するという目的は同じですが、ゼネコン各社が独自の書式を使うなど、様式は統一されていません。そのため、書き方がわからないと悩んでいる事業者も多いでしょう。
この記事ではグリーンファイルの詳細を確認し、種類や書き方について解説します。
グリーンファイルとは
グリーンファイルとは、労務安全書類のことです。
建設業者は、建設業法によりグリーンファイルの作成と保存が義務付けられています。着工後に書類内容との差異が生じた場合は、作り直して提出しなければなりません。
グリーンファイルは現場や作業員の安全を守るために必須で、建設現場のさまざまな情報が記載されています。これによって下請会社と元請会社で情報を共有でき、建設現場の安全確保や責任の所在を明らかにしておくことができます。
グリーンファイルの種類
グリーンファイルにはさまざまな種類が存在します。主要な書類だけで20種類以上にもなり、大きく分けると以下の2つに分類されます。
- 労務安全関係書類
- 施工体制台帳関係書類
以下で、それぞれに含まれる主な書類を紹介します。
労務安全関係書類
労務安全関係書類は、下請会社が現場に入る前に元請会社に作成・提出し、元請会社が管理します。以下で、主な書類を紹介します。
作業員名簿
作業員名簿は、作業員の氏名や住所などが記載された書類です。元請会社が作業員の個人情報と、雇用状況を把握できます。また、作業員の資格の有無を確認する書類でもあり、正しい人員配置を行うのに役立ちます。
雇用年月日、担当する職種や作業の経験年数、緊急連絡先として家族連絡先と電話番号など、項目に従って記載します。
再下請負通知書
再下請負通知書は、一次下請以下の会社が請け負った業務の一部を別の下請会社に依頼した場合に、提出が必要です。工事を施工する会社が直接契約を結んだ会社に提出します。
元請会社は、この書類により工事に関わる会社と、各社が担当する業務を把握します。建設工事が適切に行われることを確認する書類です。
書類は「前付」「自社に関する事項」「再下請負関係」で構成され、前付には自社に下請け発注をした会社と自社の名称などを記載し、自社に関する事項には、自社が担当する工事や工期などについて記載します。再下請負関係には、自社より下に下請負会社が存在する場合に記載が必要です。
下請負業者編成表
下請負業者編成表は、一次下請会社が二次下請け企業以下の会社との契約内容をまとめる書類です。元請会社は、この種類をもとに施工体系図を作成することになります。
二次下請会社や三次下請会社は提出不要です。また、二次下請会社を使用しない場合も提出する必要はありません。
工事内容や会社の正式名称、安全衛生責任者など項目に従い記載することになります。
工事・通勤用車両届
工事・通勤用車両届は、工事現場に出入りする車両を管理するために必要な書類です。通勤用車両のほかトラックや生コン車など、現場で使用される車両を記載します。
この書類により各車両の搬出入時間が割り振られ、建設現場で渋滞や事故が起こる事態を回避します。
持込機械等(移動式クレーン・車両系建設機械 等)使用届
持込機械等(移動式クレーン・車両系建設機械 等)使用届は、現場で使用する移動式クレーンや、重機などの建設機械を管理します。
書類には、使用する機械の名称や点検内容などの情報を記載します。また、操作担当者や必要な免許・資格の記入も必要になるため、資格証のコピーを用意しておくとよいでしょう。
持込機械等(電気工具・電気溶接機等)使用届
持込機械等(電気工具・電気溶接機等)使用届は、現場で使用する電気工具や電気溶接機などを管理します。
使用する機械の名称や点検内容を記載する。定期的なチェックが実施されていることを宣言するもので、持ち込む機械の安全性を管理するのに用います。
火気使用届
火気使用届は、溶接など火を使った工事や、暖房器具などを使用する場合に提出します。火気の種類と使用する場所を記載します。この書類の役割は、現場での火災予防及び、火災時に迅速な対応が取れるよう体制を整えることです。
工事安全衛生計画書
工事安全衛生計画書は、工事を安全に行うために必要な行動や心がけを記載する書類です。工事中に想定される危険や、危険を予防するための具体的な取り組みを記載します。それによって現場での安全と衛生を守ります。
工事安全衛生方針や工事安全衛生目標、安全衛生活動、資機材、保護具、資格の区分など項目が多く作成に時間を要する書類と言えます。しかし、現場の安全のための大切な書類のため丁寧に作成しましょう。
外国人建設就労者現場入場届出書
外国人建設就労者現場入場届出書は、外国人建設就労者がいる場合に必要です。外国人を雇用する場合には、一次下請会社以下の会社が、直近の元請会社に提出します。事業者が外国人労働者の受け入れ体制が整っているかどうかを確認します。
新規入場時等教育実施報告書
新規入場時等教育実施報告書は、建設現場に入る作業員が安全衛生教育を受け、現場ルールを理解した上で入場することを報告する書類です。
作業員にサインをもらうことにより、作業員が現場ルールを理解したことの意思表示が確認できます。
安全ミーティング報告書
安全ミーティング報告書は、建設現場で起こりうるリスクを洗い出し、その対策についてまとめて記載します。
事故防止になるのはもちろんですが、事故が起こってしまった場合に安全管理に問題がなかったことを証明する材料になる書類です。
いつどこで何を何人でといった作業予定を具体的に記すとともに、作業予定における考えられるリスクと重大性、対策など話し合った結果について書式に従いわかりやすく記載します。
有機溶剤・特定化学物質等持込使用届
有機溶剤・特定化学物質等持込使用届は、有機溶剤などの危険物を使用する際に提出します。使用日時や使用材料を記載し、元請会社から許可をもらうための書類です。
そのほかの労務安全関係書類
そのほかにも、以下のような書類が存在します。
- 労務・安全衛生管理事項引受確約
- 労働基準監督署提出書類報告書
- 安全帯使用の確約書
- 脚立の単独使用の確約書
- 有資格者一覧(技能講習)
- 免許・技能講習修了証貼付台紙
- 職長教育修了証貼付台紙
- 年少者就労報告書
- 高齢者就労報告書
必要に応じて作成し、提出します。
施工体制台帳関係書類
施工体制台帳関係書類には、先述の「下請負業者編成表」「再下請負通知書」「外国人建設就労者現場入場届出書」も含まれますが、そのほかにも元請会社が作成する以下のような書類があります。
施工体制台帳
施工体制台帳とは、下請会社から孫請企業まで、工事に関わる全ての企業および各従業員の氏名と施工範囲を記した台帳のことです。
この台帳は、建設業法において下請け契約を締結する際に作成と保存が定められています。下請金額の総額が4,500万円(建築一式工事では7,000万円)以上の場合は、公共工事・民間工事を問わず作成・保存しなければなりません。
施工体制台帳作成建設工事の通知
施工体制台帳作成建設工事の通知は、施工体制台帳に記載した通りの施工を行う旨、元請会社と下請会社の名前を記載する書類です。元請会社が一次下請会社に交付します。
工事の打ち合わせを行う場所など、工事関係者の目につきやすい場所に掲示する必要があります。
施工体系図
施工体系図は、元請会社や下請会社など、複数の企業関係や施工分担などの詳細を記載します。これにより、工事に関わる企業関係者と施工分担関係を把握できます。
公共工事では工事現場の工事関係者が見やすい場所や公衆の見やすい場所に、民間工事では工事関係者が見やすい場所に掲示しなければなりません。
提出必須となることが多いグリーンファイルの種類
建設現場やゼネコンの管理体制によって、提出すべきグリーンファイルは異なります。しかし、以下は提出が必須となることが多い書類です。
- 下請負業者編成表
- 再下請負通知書
- 作業員名簿
- 工事安全衛生書
- 新規入場時等教育実施報告書
- 安全ミーティング報告書
- 持込機械等(移動式クレーン/車両建設機械等)使用届
- 持込機械等(電気工具・電気溶接機)使用届
- 工事・通勤用車両届
- 有機溶剤・特定化学物質等持込使用届
- 火気使用届
また、グリーンファイルではありませんが、以下についてはあわせて提出を求められることがあります。
- 資格証明書(免許証、受講修了証)
- 社会保険加入状況について
- パスポートや在留カード
そのほか、一次下請会社、二次以降の下請会社、一人親方など協力形態によって提出書類が異なることがあるため、元請会社に事前に確認し、必要書類を作成しましょう。
グリーンファイルの書式
グリーンファイルには決まった書式はなく、事業者によって異なります。全国建設業協会が定める「全建統一様式」が利用されることもありますが、建築工事を取りまとめるゼネコンによって書式を指定される場合もあり、それぞれの書式に従いましょう。
書式が異なっても、どの建設現場でも記入する内容は共通しています。書類作成者は各書類の内容を把握し、スムーズな対応ができるよう準備しておくとよいでしょう。
グリーンファイル作成における課題
建設業は現場での作業だけが仕事ではありません。グリーンファイルなどの書類作成も重要な仕事です。グリーンファイルの作成・提出、保存により安全性の確保、情報整理により業務を円滑に遂行できます。
しかし、二重入力しなければならない項目があったり過去の書類が管理できていなかったりするなど、効率化が図れていない場合もあるでしょう。万一書類に不備があった場合は再提出が必要になります。情報の整理や書類作成に手間取ると、現場での作業に影響を与える可能性があります。
設備工事は建築工事の遅延を受けて工期が短くなる事態も多く、常にそれぞれの業務における負担を軽減する工夫が求められます。
図面作成や配管加工において、社外サービスを利用するのも1つの方法です。工事工程の一部を専門サービスに依頼すれば、工期の遅れを取り戻せる可能性があります。また、プロが行うことにより品質の向上も目指せます。精度が上がり品質も安定するでしょう。
まとめ:グリーンファイルは円滑な業務遂行のために必要不可欠
グリーンファイルは、現場や作業員の安全、スムーズな業務遂行のために必要不可欠な書類です。記載すべき内容や書式は変更されることがあるため、最新情報をインプットしておく必要があります。建設業法により作成や保存が義務付けられているため、最新の動向を把握しておきましょう。
今後は現場管理業務の円滑化を図っていくため、このような書類作成業務の効率化だけでなく、様々なアウトソーシングサービスを検討してみてはいかがでしょうか?
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